第三回

様式美
HR/HMの文脈においてしばしばこの言葉は「クラシカルな音階を用いたメロディラインをフューチャーした」楽曲やバンド、という用法で使われるが、元来の言葉の意味とは乖離している。様式美とは、ある様式を忠実に守ること、言うなれば「お約束」である。HR/HMにおいて価値とされるのは「ただ速いこと」「ひたすら重いこと」など音楽としていかにエクストリームな部分を持ち、それを突出させるかであり、あるいは「美メロ」や「悪魔崇拝」など記号化された要素でいかに完璧に武装するかである。ブルースの人間臭さ、ロックの社会性(笑)などとは無縁な、完全無欠なお約束の美学である。それが様式であり構造である。